ふたつの約束

kidoの作品

【ふたつの約束】

こんにちは! kidoです。

この作品は、エッセーというより超ショート小説みたいなものです。

記憶では、「約束」をテーマにしたエッセー募集で書いた作品だったと思います。

 

自分自身との約束……それは夢や目標であったり、自信や不安になるものでしょうか?

相手との約束……それは結婚やあらゆる意味でのパートナーであったり、愛や友情、信頼といったものになるのでしょうか?

 

そんな「ふたつの約束」をテーマにまっすぐ青春的に描いてみました。

読み返しても、自分らしくはない作品だと感じましたが…笑

 

読んで、何かを感じてもらえれば嬉しく思います。

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ふたつの約束

 

「ねえ、ゆうき君なんて書いたの?」
「内緒だよ」

 私が通っていた小学校では六年生になると、将来の自分に宛てた手紙を書いてイチョウの木の下に埋める行事があった。

 いわゆるタイムカプセルだ。

 私たちは二五歳の自分に宛てて手紙を書いた。

 世間一般では二〇歳の成人式後のイベントとすることが多い気もするが、私たちの学校では成人式後にも集まれる機会を設けるために二五歳に同窓会が開かれることになっている。

 卒業アルバムの最後のページにも○○年にまた会いましょうと再会の誓いが記されている。

 そして、二五になった年の秋に、突如同級生から連絡があった

「あ、ゆうき君? 久しぶり。元気にしてる?」

「おー、久しぶりやね。俺は元気、元気。どした?」

「絶対忘れてる思うけど、同窓会があるんよ」

「そう! 聞いてたかな?」

「いや、小学校の二五歳に集まって、ほら、タイムカプセル開けるやつ」

「あー! あったね。そりゃ忘れるよ」

「じゃあ、そういうことで」

「りょうかい」

 こんな流れで突如同窓会の連絡が舞い込んできた。

 誰かが急に思い出したのか、学校で事務的に管理しているのか知らないが、これだけ年月が経っていてよく連絡がきたと感心した。

 二週間後の日曜日、私は同窓会に参加した。

 日中、学校でタイムカプセルを開けて、夕方から近くの居酒屋で宴会の予定だった。

 久々に会った同級生たちは皆、大人の雰囲気とまだどこかあどけない雰囲気が混ざったようであった。
 世間話をしながら埋めたはずのイチョウの木に向かった。

 イチョウの木は多くの黄色い葉を落としていた。

 率先して穴を掘っていく同級生を横目に私は自分の書いた言葉を思い起こそうと努めたがまったく浮かばない。

「お、あった! あった!」
 一人の同級生が声を上げた。

 自然とその同級生が、箱から一人一人のカプセルを取り出し、順々に手渡す係りとなった。

 私は自分の名前が呼ばれるのを期待と緊張の入り混じった様子で待った。

「はい。ゆうき」

「はいよ」

 軽く返事をしたが、受け取った手は少しくらい震えていたかもしれない。

 中身を開けると手紙がでてきた。
「二五歳の私へ、結婚はしていますか? 子供はいますか? 一つだけお願いがあります。立派な消防士さんになって、みんなを守ってください」 

 私はこの短い手紙に驚いた。

 なぜなら今、私は消防士として隣町の署で勤務しており、この頃の約束を果たしているからだ。

 就職を考える時にも、このような幼少期の潜在意識も関係していたのだろうか? 

 若しくはこの頃の約束を果たすよう無意識に行動していたのだろうか?

 私は手紙を持ったままそんなことに思いを馳せた。 

「ゆうき君なんて書いてたの?」
 そう尋ねてきたのは、小学校から中学校まで一緒で比較的仲良くしていた成美だった。

 その頃は恋愛感情を持ったことはなかったが、十数年ぶりに見る彼女はあか抜けて、女性としての色気を身にまとっていた。

「消防士になってるか? だって!」

「うそ! 現実になってるじゃない」

 そう言って、目を丸く開いて驚いた顔が可愛かった。

 私と成美はその後の宴会でも席を近くして座り、昔話や将来の話に盛り上がった。

 これをきっかけに私たちは付き合うようになった。

 今では、もう付き合って五年になる。

 

 

 私はそんな昔を思い出しながらホテル三七階にある高級レストランに向かった。

 成美をディナーに誘ったのだ。

 一〇分ばかり遅刻のようだ。案の定、店の前に成美は立っていた。

「ごめん。ちょっと遅くなった」

「あ、お疲れさま。全然待ってないよ」

「ほんと」

「うん。それより今日はありがとう。すごくお洒落ね」

「誕生日やし、たまにはね」

 私たちは席に着き、乾杯をした。

 次々と運ばれてくる豪華な食事や、成美との会話も、どこか自分の五感でしっかり受け取ることができない。

 それは、自分の中で決めた約束をいつ口にするか迷っていたからに間違いない。

 そんな不自然な様子を察してか、成美は「どうしたの?」と私に声をかけた。

 その言葉を発射台に、私はずっとポケットの中で握りしめていた大切なものを取り出した。

 婚約指輪だ。

「……結婚してください」

 私はまっすぐ彼女を見て、そう言った。

「……はい」

 彼女は目を丸くして返事した。

 私は約束した。

 今度は自分自身だけでなく、二人の未来を…… 彼女の幸せを……

「一緒に幸せになろうな」

 

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